パンドラ城跡地

妄想・駄文語り

ゼロワンとアンドロイドとポストアポカリプス

令和ライダー第一作、仮面ライダーゼロワンも昨日二話目が放映されましたが、

みなさんはどのような感想をお持ちになられたでしょうか。

 

 

私はもともと、東映特撮のロボットを主人公にした幾つかの作品が好きだったので、

舞台設定から趣向にがっちり合致していたのですが、第一話、第二話で描かれた、

ロボット……この作品ではヒューマギアと呼ばれている彼らが、

与えられた使命に、彼ら自身それと知らず喜びを覚え、心を芽生えさせ、

そして頬を緩ませるシーンは、この後に訪れる悲劇を含め胸に迫るものがありました。

 

現段階で人類社会の敵として描かれている滅亡迅雷.netと呼ばれるテロリストたちも、

現生人類種の絶滅を目標に掲げ、ヒューマギアを友と呼ばわりながら、

道具として薄ら笑いさえ浮かべながら平然と使い捨てる様は、

こういう作品に求める悪役象として個人的に百点満点を献上したい仕上がりでした。

 

二号ライダー、不破も非常に尊い

ヒューマギアを人類の夢と定め、彼らと人類の共存する理想社会のため戦うゼロワン。

それに対しバルカンは、ヒューマギアを人類の敵とし破壊することを目的とする。

仮面の戦士として主人公と相反する目的を掲げ戦う彼が、しかし、

主人公の仮面ライダーゼロワンでも飛電インテリジェンスの社長でもない、

「お笑い芸人・飛電或人」のギャグで唯一笑う、

主人公の素顔を誰より評価している人間と言うのが実に尊い

 

 

さて、ちと暑苦しく語りましたがこの記事の本題はここから。

仮面ライダーゼロワンの一話・二話は平成以降のライダーの中でも特に良く出来ていたましたが、同時にとても心に重く伸し掛かる出来栄えになっていました。

「つらい」「くるしい」「でも見たい」

そう思われる方に向けて、予習することで今後の展開に耐性が付けれるかもしれない作品を特撮と漫画からそれぞれ二点ずつ紹介していこうと思います。

 

 

超人機メタルダー

平成ライダーシリーズが始まる前、東映がやっていたヒーローシリーズ、

メタルヒーローシリーズ」の一作。

 

莫大な資金力と、帝王ゴッド・ネロスの凄まじい科学力が生み出す

圧倒的武力により世界を表裏から支配しつつあるネロス帝国。

それに対し太平洋戦争中日本軍によって極秘裏に開発されていた戦闘用ロボット、

剣流星(つるぎ りゅうせい)=超人機メタルダーが呼び起こされ、

人類の平和の為に戦いを挑む……というのが大まかな筋ですね。

 

 

この作品で一押ししたいのはネロス帝国四つの軍団の一つ「戦闘ロボット軍団」

彼らは高度な学習能力で様々な状況に対応し、経験を積むことで、

それぞれが唯一無二の戦闘能力と、豊かな個性を獲得しているのですが……

彼ら戦闘ロボット軍団は、その個性が凄まじい。

多くの者が(ロボットであることを自覚しながら)鍛え上げた自分の技に誇りを持ち、

美学に基づいた行動規範を有し、それに反することがあれば、

絶対権力者である帝王ゴッドネロスの命令にさえ反することも出来る。

 

例えば一人の戦士として戦うことを邪魔されたので帝国に叛いたスナイパー

例えば高い地位に上り詰めながら、戦いに嫌気が差し勝手に引退した戦士

例えば自己の保身も省みず部下の助命嘆願を願い出る軍団長

 

そんな、主人公以上に主人公らしい気持のいい奴らが、それでも、

与えられた運命に逆らい切ることが出来ず、戦い、散っていく様は悲壮且つ美しい。

 

ゼツメライズされながら、最後まで自分の使命を全うしようとしたヒューマギアに心打たれた方々に是非観てもらいたい作品の一つですね。

 

大決戦!メタルダーよ永遠に
 

 

 

特捜ロボ ジャンパーソン

こちらもメタルダー同様、メタルヒーローシリーズの一作。

高度知性を備えたロボットが普及する未来社会……という、

仮面ライダーゼロワンにとてもよく似た世界観を有する作品です。

この作品は兎に角キャラクターが濃い。

特撮ファンには仮面ライダーBlackRXのマリバロン役でお馴染み

高畑敦子さんが熱演する、圧倒的なカリスマ性で多くの科学者を操り、

人類殲滅し地球環境の回復を目論むエコテロリスト集団

スーパーサイエンスネットワークの総帥、西園寺麗子

 

人類を滅ぼしロボットが支配する世界を作り出そうとする、

滅亡迅雷.netに良く似た目的を持つ犯罪組織・ネオギルドのボスであり、

滅亡迅雷.netの「滅」に良く似た風体の男、ジョージ真壁

 

世界経済に大きな影響を与える大財閥・帯刀コンツェルンの総裁に飽き足らず、

裏世界の支配をも目論む、子供の様な無邪気さと悪魔の様な残酷さを併せ持つ男、

仮面ライダーZX・村雨良役の菅田俊氏演じる帯刀龍三郎

 

そして、暴走し危険なため廃棄・封印されたロボット兵器を

自身の美意識を表現する為に無断で持ち出して改造し、

自裁量で犯罪者に審判を下す特捜ロボとして世に解き放ったばかりか、

そのロボットに男女間の思慕まで抱いてしまった、

この作品のみならず特撮作品の中でもぶっちぎりに倫理観の吹っ飛んだ

狂科学者、三枝かおる……

 

聞けばゼロワンはあのエキセントリック極まる檀黎斗を世に送り出した

高橋悠也氏が脚本を務めているとのこと。

両作品の共通点を見るにつれ、ゼロワンにも

エグゼイドやジャンパーソンに匹敵する凄いキャラクターが出てくるのでは……?

と、期待しております。

謎の新英雄!

謎の新英雄!

 

 

 

さて、ここからは漫画作品。一つ目はこちら。

 

からくりサーカス

10年以上前に少年サンデーで連載されていた、

熱血アクション・ホラーコミック

 

ざっくり説明すると、

他人を笑わせなければ苦しみ続ける奇病を撒く

錬金術で作り出された自動人形(オートマータ)と、

その奇病を錬金術で造られた薬で克服し

操り人形を使って復讐を果たそうとする人形破壊者(しろがね)、

その両者の誕生に纏わる者達を描いた作品です。

 

去年から今年にかけて深夜アニメ化したのでご存知の方も少なくないと思いますが、「自立稼働する人型の人工物」が登場する以外にも序盤の展開や設定に共通点が見られるんですよね。

例えば、突如亡くなった祖父から莫大な遺産を相続する主人公だとか

主人公は人を笑わせるのが下手糞だが、真摯に人を笑わせたいと思ってるとか

人形たちが人間的な心、感情を手に入れることが物語の鍵になっているだとか

主人公の脳に遺産の使用方法がダウンロードされる下りとか……

 

「熱血アクション」と紹介した通り、主人公の一人、

加藤鳴海の男ぶりや胸のすくカンフー・アクションも特筆すべき点なのですが、

それ以上に、作中登場人物にこれでもかと降り注ぐ苦難の数々。

この作品の作者、藤田和日郎先生をパロディしたキャラクターが

吼えろペン」という漫画に登場するのですが、

そのパロディキャラクターの台詞が藤田先生の作風を的確に表現しています。

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 要するにカタルシスのために過剰な苦難(いわゆる“くもらせ”)が与えられる訳ですね。

逆に言えば幸せな、暖かな描写が差しこまれた時は、叩き落される前触れですね。

 

ヨコハマ買い出し紀行

サツバツとしたネオサイタマめいた上記作品群とは打って変わり、

こちらはロボットの喫茶店店主アルファさんの穏やかな日々の営みと

美しい情景を眺め楽しむ穏やかな雰囲気の作品です。

 

この作品の空気感は「夕凪の様なてろてろの」と表現されるのですが、

この「夕凪」と言うのは言い得て妙でして、

この作品の舞台は「ロボットであること」が人間の一つの個性として

受け入れられるほど人々の感情が成熟し、

同時に、人類社会全体が老い、間も無く一つの区切り、

夜を迎えようとする黄昏の時代です。

 

しかし、そこに悲壮感はなく、

水面の向こうに広がる大都市の跡、

街道を少しずつ飲み込んでいく草や砂の海、

寂れゆく町の中で泰然と佇む老人たち……

 

人とは異なる時間を生きるロボット

初瀬野アルファの目を通した美しい夕凪の時代が描かれていきます。

 

 

何故、人間は人に似た姿のロボットを造ろうとするのか。

人類の臨終を看取る彼女らに思い馳せると、

その理由がぼんやりと頭に浮かぶかもしれません。

 

 

 

 

ロボットを主人公に据えた東映特撮作品は上記以外にも、

 

同じ科学者から生まれたロボット同士が骨肉の争いをする「キカイダー

 

キカイダーの続編で仮面ライダーゼロワンと共通した名前を持つ「キカイダー01

 

ロボットを犯罪に利用する営利企業とそれを阻止するため、

警察に派遣されたロボット刑事Kとの戦いを描いた「ロボット刑事

 

高度な思考能力を持つ人工知能が一方は人類を支配するため、

一方は人類を守るためロボットを駆使して闘う「大鉄人17

 

悪法と名高き自己裁量権対バイオロン法に基づき

人類社会に潜伏する化け物を処断する東映ロボコップとも言える「機動刑事ジバン」

 

上記キカイダーのライバルキャラを主役に据え、

管理社会への非難と警告を織り交ぜたダークヒーロー作品「ハカイダー

 

などなど、多くの選択肢があります。

個人的には思い悩み傷つきやすいメンタルをしたKと、

最初は頑固一徹の鬼刑事として登場しKを毛嫌いしながら

最終的にはKを最も理解し父親のように愛おしむ芝刑事らが魅力的な

ロボット刑事」をお勧めしたいですね。

 

 

漫画作品なら

 

ロボット版ブラックジャックと言った作風で、AIがシンギュラリティを越えた時代、

心を持つに至ったロボットが人間社会に溶け込んでいる時代を描いた「AIの遺電子」

 

SF小説幼年期の終わり」をオマージュし、人類が黄昏の時代を迎える中、

余命わずかな人の臨終に寄り添うよう調整された人造人間の少女の物語

「愛人 AI-REN」

 

星の形さえ変わった遥か未来、美しい姿と長久の命を得ながら、

祖である旧人類の業に縛られた三つの種族が描かれる「宝石の国

 

あとはクロスボーンガンダムの作者、長谷川裕一先生の代表作「マップス」も、

滅亡迅雷.netの目的を予測する上で参考になるかもしれませんね。

 

 

それでは、あなたにも良き終末が訪れんことを……